僕の炭焼き修業は、山から原木を切り出す仕事から始まった。
毎日山の仕事が続き、よく父親と「もっと炭を焼く技術を教えてほしい」と言ってケンカをしたが、今思えばそんな事を言った自分が恥ずかしいです。
なぜならば炭焼き職人は「焼く技術」はもちろん、「山を作る技術」も持っていなければ、プロとは言えないからです。
しかし、最近山をつくる為の「伐採」という作業をしない人が増えて、山が荒れ、原木が不足するという炭焼きにとって一番辛い問題が起きています。この問題を解決する為に、若い炭焼きさんを集めようとしても、なかなかスムーズに行かなかったが、最近大きな光が見えてきた。
それは「どんぐりプロジェクト」です。関心のない人から見れば、1本の苗木を育ててどうなると言うかもしれないが、その1本の苗木がやがて大きな森になると僕は思います。
なぜならば「どんぐりプロジェクト」と山を思う炭焼きさんの「心」に共通する所があるからです。
昔の炭焼きさんが、山を愛し、こつこつと山を守り育ててきたように、僕たちもこつこつと山を育て、次の世代も豊かな森を残していく為、一人でも多くの仲間を作っていきたいと思います。
それが炭焼き職人の大切な仕事の一つだからです。
2010年9月13日
原 正昭(はら まさあき)
備長炭製炭士
21歳から父親につき炭焼き業を始める。それまでは都会に出て営業の仕事をしていたが、それが自分の目指す仕事ではないとあきらめ帰郷。
都会から見た田舎のすばらしさに気づき、父親の仕事を継ぐことを決心。以後現在に至る。