備長炭と花 大槻 寧

炭を飾る〜備長炭と掌のショーウィンドウ〜

花を活けることを生業として日々を過ごしていると、普段の生活ではなかなか出会うこともできない植物と対面する事がある。そんな中でも、 有機体としてのインパクトが極めつけに強いものといえば、備長炭もその一つに当てはまるのかもしれない。
花や枝を活ける感覚で備長炭を空間に活け込む。
備長炭でデザインを起こすということは、私の中では花活けと同じことなのだと思う。一つとして同様の形や重さをもつことがない備長炭をス ペースの中に活け込むとき、それは私にとって日常の花活けと変わらない、植物との会話の中から必然のフォルムが生まれてくるのである。
右に流れたい炭、左を向きたい炭。立ち上がりたい炭があったり、表情(焼上がりが特に印象的な面)をこちらへ向けてほしがっている炭がいる。
各々の個性や訴えを最大限に引き出し応えることができた時、彼らはひとつの作品として私と共に在るのだ。
備長炭と花。
共にオーガニックでありながら短命な植物と、紀州製炭士の伝統技能によって新たな生命を吹き込まれた備長炭。
呼吸し生き続ける彼らと共に、今後もより良い表現を重ねて行きたいと願ってやまない。

2010年8月17日

大槻 寧(おおつき・やすし)
花人 有限会社 花太郎 主宰
故・保坂桂一を師事。平成18 年より花太郎を継承。
師の遺した作風をデザインの源とし、
花太郎の花表現を後世に残すべく日々奮闘中。