古くから日本の風土の中で培われた文化である“炭” と“現代のライフスタイル” がどのように繋がることができるのか?
今回のディスプレイを制作するにあたって、まず思い浮かんだのは、“炭と日常生活” の関係でした。そしてそれは、「現代の生活道具であるところの家具や、照明、雑貨等と、“芽吹く春のイメージ” を纏った備長炭で、ひとつの世界観を表現することが出来たら・・」というものでした。
引き続き、幾つかの案を重ねていく中でも、そのイメージは消えることなく、その後もデザインの骨格となり、そこから具体的なプランが始まりました。
制作途中においては、金属の様に堅い備長炭を造形物として加工する大変さはありましたが、頭の中に描いていたものを実現してみたい一心で・・『炭であることを最大限に生かしながらも、今迄観た事のない炭の
佇まいを持った表現』・・を目指しました。やがて形づくられた炭たちは、しっかりとディスプレイ空間を支え、しなやかにうねる雲竜梅の枝や、ペールトーンの色彩やモダンなフォルムの、家具や照明、雑貨とともに、
不思議な共鳴を創りだしてくれました。
こうして、なんとか「炭と日常生活」にも自分なりの答えを見つけることが出来たことや、新しくはじまる銀座の春を飾る、ひとつのウィンドウになれたことを、今とても嬉しく思っております。
2010年2月15日
伊藤 弘二(いとう・こうじ)
東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了後、美術表現延長の場としてのアンティークショップ
“Koumoriya” を運営。
空間表現のほか、壁画制作及び絵画制作も行う。