備長炭の色と形 《水面/誰彼時》〜 大竹 敦人

炭を飾る〜備長炭と掌のショーウィンドウ〜

備長炭に何を見るのか?
装飾としての美しさや斬新さ? 浄化や燃料としての効果?
単純に備長炭の輝きに力を感じるのだから…
放つ色彩と形態そのものを見せられれば十分ではないか?
そうだ…“水面拾集”の帰りに見たコトと同じモノが見える!
(制作ノートより)

湖面のその限りない光の反射から形を取り出そうと試みる
その風景には色彩が溢れだし、何もつかめず一日が終わろうとしている

やがて風が止み、水面が完全な水平を取り戻す
昼と夜が入れ替わる境界の、その頃
ゆっくりとすべての色が褪せて行き、明暗の世界に移り変わる

「誰彼時」-たそがれどき-

闇に包まれながら、先ほどまでの鮮やかな色彩を支えていた形が露わになり
炭色の美しい色彩と形が輝き始める

この時にこの風景と一体になるには、水面を拾い集めようと試みた船上での長い時間が必要であった

紀州備長炭の生が閉じこめられたかのような形や表情、透明感さえ覚える光沢のある色を見て、その魅力と以前から形にしてみたかった船上での忘れられない体験が繋がるのに時間はかかりませんでした。そして、心に響く一本の備長炭に出逢えれば、なにも大袈裟に飾り立てる事は必要ないのではないかと考えました。

皆様も備長炭を選ぶときには五感を目一杯使って自分の内側を炭に映し出してみたらいかがでしょう。 言葉にならない選ぶ理由がきっと見つかると思います。

そして掌にお越しの際は、私の内側の体験を映し出した作品を
是非ご覧ください。

2009年8月19日

大竹 敦人(おおたけ・あつひと)
美術家・工学院大学准教授
東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了後、ガラス球体にピンホールの原理で写 真を写し込む球体写真のほか光と闇のインスタレーションなどを展開させ、近年は 「水」に関わる作品を発表している。シカゴ美術館、愛媛県美術館、府中市美術館、 群馬県立近代美術館などに作品が収蔵されている。