銀座の地下にあるBAR のリニューアル計画。
老舗のBAR が建ち並ぶ銀座において、オーセンティックなBAR として、重厚でありながらも繊細で落ち着きのある空間にしたいと考えた。
クライアントからの要望は旧BAR で使用していたターコイズブルー色の革張りのチェアを使って欲しいということであった。
まず、地上のエントランスから階段、BAR へと壁に使用しているタイルのトーンを徐々に落とし、日常から非日常へと緩やかに導いている。BAR へ入ると腰高より上にはオークの木板が貼られている。この木板は5種類の幅を用意し、それぞれ5 色に染色し、透かし目地を取りながら木の「年輪」をイメージしてランダムにストライプ状に配置している。「年輪」とは、その木がどのような体験をして生きてきたかを表すものである。木の「年輪」をイメージすることで、旧BAR の記憶(ここではターコイズブルーのチェア)をも取り込み、新たな記憶を作り出そうとしている。
BAR とはその日の記憶をとどめる場所でもあり、未来への新たな記憶を作り出す場所でもある。この場所に新たな年輪を刻みながら、店名である「掌」という言葉が意味するように、訪れる人々にとって、力強くも優しい手のひらに包まれたような居心地を感じていただければと思う。
2018年01月15日
小川 博央(おがわ ひろなか)
日本大学大学院を卒業後、世界的建築家の隈研吾のもとで経験を積み、2005年に「小川博央建築都市設計事務所」を設立。独立後2年にして日本国内のアワードのみならず、世界でも賞を受賞し海外でも高い評価を受けている。
素材、新技術、美学的な洗練を統合する新たな建築の可能性を提案している若き建築家の一人である。
主な受賞歴
・2006年 Good Design 賞2006
・2006年 Design For Asia Award
DFA Grand Award 受賞(アジアデザイン大賞 受賞)(香港)
・2007年 2007 IIDA INTERIOR DESIGN AWARDS 34th ANNUAL
INTERIOR DESIGN COMPETITION BEST5(アメリカ)
・2007年 NASHOP Lighting Awards '07 グランプリ受賞
・2012年 LEAF Awards 入選(イギリス)
・2012年 Architectural Record - Design Vanguard 2012 (アメリカ)
(世界の若手建築家10人の1人に選ばれる)
・2013年 2013年日本建築学会作品選集新人賞
・2013年 2013年日本建築学会作品選奨
http://www.ogaa.jp/