漆黒の艶「あぶらけ」のある備長炭 | 小谷 浩

漆黒の艶「あぶらけ」のある備長炭 紀州備長炭
ご存知の通り、主に馬目樫を原木とした燃料で火力、硬さともに世界一の炭です
しかし、その魅力はそれだけではありません
紀州備長炭の硬さ故の断面の美しさ
また、長尺の炭は自然のままの造形美となめらかな漆黒の艶
このなめらかな漆黒の艶を炭焼きは「あぶらけ」と呼び、それは経験に裏打ちされた技術を
駆使し、いつくもの工程を経てようやく焼きあがる、ごく限定的で貴重なものになります

掌の備長炭オブジェに使用する、特に長尺で細い炭( 直径2cm 以下) を焼き上げるには
一段と神経を使います
それは、原木を伐るところから始まります
細い原木は、収炭率が低いとのことで山に残してくる炭焼きも少なくありません
また、細い炭は窯出しの際に溶けやすく、折れやすい
いわゆる、効率が悪いうえに長尺で上質な炭に焼き上げるのが難しいとの理由からです

窯入れ    どこにどう入れるか
炭化     煙の匂い( かざ) と色
精錬( ねらし) 硬く引き締まっているか
窯出し    ベストなタイミングで折らずに取り出せるか

と続く一連の工程すべてで気が抜けません
最終、選別の工程においては、1 本1 本打音しても折れず、澄んだ高音の金属音を奏で
かつ、なめらかな肌に焼きあがった特別な炭だけを選りすぐります
その丹精を込めてつくる紀州備長炭が、掌のデザイナーの手によって
「自然を活かす」新たな形で作品として生まれ代わり
炭の魅力を発信してもらえることは、炭焼きにとって嬉しいことです。

みなべの炭焼き
小谷 浩(こたに ひろし)